武甲山登山(吉田庄一)

別に登山が目的ではない。3年ほど前、放射能測定が目的で一の鳥居から橋立鍾乳洞まで縦走した。HSF市民測定所・深谷の放射能見える化プロジェクトの一環で私が担当したのだ。登山のベテランDさんにエスコートされ、山岳会に入っているSさんと、昔、昔、むか~しに登山したことがある吉田の3人だ。真夏だったので、はっきり言って参った、HSF(ホットスポットファインダー)を画板のように首から提げ測定しながらの登山は簡単ではなかった。

 

あれから3年、再び武甲山の計測登山を行うこととなった。福島第一原発事故から10年が経過する。今まで計測した結果を16冊に纏めて公表してきたが、もう一度主な場所を計測してみようとなったのである。武甲山の空間線量は問題となる場所はなかったのだが、土壌測定で山頂と長者屋敷頭で異常値が出ていたのである。

 

今回は、秋のベストシーズンということもあり、HSF市民測定所・深谷の主催者Kさんと私の2人だ。最初は、前回とは逆に橋立鍾乳洞から第一鳥居まで縦走しようと考えた。しかも橋立川の側道を行けるところまで行き距離を稼ぐ計画だった。ところが、武甲山、去年の2つの台風であちこちで土砂崩れなどあり車では入ることができなかった。この爪痕は一般登山道も例外ではない。と言うわけで、第一鳥居から山頂そして長者屋敷頭を往復することにした。3年前、なんと4,000ベクレルを計測した長者屋敷頭は外せなかったのだ。

 

今回のコースは、登山初心者のkさんには難しいので、途中から私が一人で長座屋敷頭まで行き、山頂に戻り落ち合うことにした。なんせ山頂から長座屋敷頭までは急激に下って行くので、また登るとなるといささか気が重かったが覚悟はできていた。kさんにはゆっくりのペースで登ってもらうことにして、私は少し先を行き定点観測をする場所を決め、事前に測定を済ませkさんを待つという具合だ。合流したkさんは、そこで土壌測定をする。この繰り返しで登ったのだが、それでも先を考えると時間的な余裕が無いので、大杉の広場の次のポイントからは、別行動にして先を急ぐことにした。因みに、地上1,000mの大杉の広場までの空間線量は低くセシウムも確認できなかったが、この辺りからはセシウム137がはっきりと確認できる。空間線量はあまり高くないのだが。

 

私は、山頂付近を通過して一気に下って行った。天気も良く紅葉が綺麗だ。途中トレイルラン(でしたっけ)をやっている人が私をさっさと追い抜いて行った。急斜面を走り抜けて行ったのだ。なんとまあ、恐れ入谷の鬼子母神である。こっちとら、ヒーヒーいいながら山頂から長座屋敷頭まで往復した次第である。高価な測定器なので転ぶことに注意しながらだったので想像以上に体力を消耗したようだ。

  

でも、ご褒美は待っていた。山頂からの北埼玉一円の眺望である。深谷の櫛引から三ヶ尻の観音山、熊谷ドーム、なんと、さいたま新都心まで見えるのである。石灰岩の採掘で山頂ギリギリまで削り取られ断崖絶壁の上に立っているイメージなのだが。山頂付近でkさんと合流して改めて計測をし再び第一鳥居を目指し下った。大杉の広場からは、先に行くことにした。長者屋敷頭までの下りをトレイルランに触発されたわけではないのだが、少し急ぎすぎたからか、右足のつま先が痛くなり早くトレッキングシューズを脱ぎたかったのだ。車に戻り靴を脱ぎ一休み。そしてこのままでは暗くなってしまうので、kさんを迎えに行った。大杉の広場で一緒になったカップルが、「お連れは少し後から下りてきますよ」と、一安心した次第である。