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山再デビュー(大久保由美子)

 山というのは辛いところというイメージしかなかった。子どもの頃、山国岐阜に住んでいたこともあり、時々、親に山へ連れて行かれた。子どもだから、肺機能が未熟だし、しかも呼吸が浅かった私は、山に登る事は辛い以外になく、学校の遠足で連れて行かれた近くの低い山でさえ、もう二度と登りたくないと思ったほど。よく、頂上からの景色が素晴らしいから、山に登るのが楽しいんだよというけど、そんなの、エレベーターで高いビルの屋上に行ったって、飛行機に乗ったって見られるじゃないと思ったものだ。20代の頃、北海道の羅臼岳に登ったのを最後に、山から遠ざかっていた。

 ところが、最近、何だか山に登りたくなってきた。それで、誰かれなく、どの山が初心者にはいいの?と聞いていたら、この前、ハイキングに行かないかと誘われた。ハイキングなら大丈夫だろう、苦しくはないかもしれないと思い、喜んで参加させてもらった。行った先は鐘撞堂山。頂上は見晴らしが良く、そのため、昔は北条氏の鉢形城に異変を知らせる鐘があったとかで、この名前がついている。標高330メートル。気楽にハイキングが楽しめるところとどのガイドにも書いてあったが、ほぼ初心者の私には、充分な山登りだった。トレッキングシューズを履いて行って正解なくらい、滑りやすいサラサラの土で道は覆われ、ちょっと急な登り道もあった。そんなに高い山でもないが、私に合わせてくれて、休み休み歩いて1時間ほど、苦しさを感じることなく頂上に到着すると、本当に見晴らしのいいこと熊谷ドームも見える。初めて、頂上からの景色を素晴らしいと感じることができた。

 

頂上で、ゆっくりお弁当を食べて、一緒に行った方の手作りの抹茶シフォンケーキをいただき、満喫。下山はあっという間で、そこから家までは車で1時間ほど。午後3時には家のリビングでくつろいでいた。何とも気楽なハイキングだった。そして、山登り女子部が活動開始した記念すべきハイキングになった。これから月一くらいで行こうねと約束をしたのだ。人生の楽しみがまた一つ増えた。

コメント: 1
  • #1

    にじ (月曜日, 14 12月 2020 20:42)

    メッセージ: 山ガール、再デビュー、おめでとうございます。いい時期の山行きでしたね。私は山男の父を持ち、武蔵野に住んでいた子ども時代、けっこう奥多摩や信州の山に連れて行かれました。夏の乗鞍の寒さ以外は楽しい思い出だけ。ハイキングっていい言葉だよね。気持ちが高揚する。今も山では見知らぬ人がお互いに「こんにちは」っと挨拶を交わすのかしら。私も行ってみたくなりました。