ついにきた 私にも
米田 かずみ
うねる棒グラフ
下降線を辿ることのない感染者数
陽性者と接触しました
八月十四日 一個
感染者アプリ「ココア」の表示
皮肉にも私の誕生日だった
一メートル近づいた人なんて何人もいる
十五分間も話した人は?
終日
異変を体に問いかけながら
夜がくる
翌朝
玄関のガラス越しに袋が見える
叔母からの電話
手のひらで花びらになる
冷たいみかん
口に広がる甘酸っぱさが喉元を潤す
心に一瞬陽が射し込んだが
依然として私は身を入れたまま
貝の蓋を閉じている
開けられないまま
もう一週間になる
こんな詩をつくり、新聞に投稿した。
早速、共感する投稿があった。
一人暮らしの私は、真夏の最中、自宅待機で悶々としていた。しゃべるのは唯一スマホである。終日、熱が出るのではないか、咳が出るのではないかと不安な気持ちでいっぱいになる。
保健所の人は丁寧に対応してくれたが、検査のためにバスやタクシーを使えないと言われた。防護服で職員がきてくれるという話だったが。
ああ、私はバイ菌になったのだと、自覚した。
保健所の話は、ありがたいことだったのだが、世間を憚る気持ちの方が優先していた。
私がいくら説明したところで近所では噂が噂を生み、飛んでいくに決まっている。狭い考えに自己嫌悪にもなった。
しかし、そんなことを恐れている場合ではない。緊急入院という事になったら私は今頃この世にいなかったかも知れない。
幸い、近所の病院でPCR検査をしてもらい、陰性だった。
この体験は、「感染症」という孤独な戦いに直面した多くの感染者の人との思いにつながった。
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