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月一落語会9月の巻(吉田庄一)

 

 落語好きの先輩がいて、コアのメンバー4人で月一回、都内を散策して、落語を聴く(どこに行くかは幹事がほぼ独断(丸投げ)で決めてくれる)。落語の後は、これがメインでもあるのだが飲み会となる。一番上の先輩はすでに鬼籍に入ってしまい、今は3人で続けている。亡くなった先輩は、落語協会の現会長である柳亭市場さんと親交があり、会長の歌謡ショー?などにもお付き合いさせていただいた。 

 

9月は、久しぶりに上野鈴本にだった。別の夜の部が控えているため昼の部なのだが、9月下席昼の部の取りは柳家小ゑん、小さん、小三治と人間国宝になっているが、彼の芸風では続くのは難しいだろう。本人も自覚している。この日は千秋楽ということで好き勝手にやらせてもらうと宣言して、電気少年だった自分をソニーの井深さん?に投影させハチャメチャに演じた。彼が表現した秋葉原の電気街、部品を求めて今でいう部品オタクの聖地だった。私なども、カラーコードの抵抗器など頭に入っていたことを思い出した。変化への対応力と言えば聞こえもいいが、今の秋葉原が生み出したものと失ったものを比べると、失ったものの方が大きい気がする。その分日本の製造業の沈没にも繋がっているように思う。 

 

この日は、落語は春風亭一乃輔(さすが、粗忽長屋をコンパクトに演じきる)や林家彦いち(学校ネタの落ちは森友学園)など、あちこちでよく遭遇するのだゆきさん(持ちネタはワンパターンだが面白い)、紙切りは林家二楽さんで、客席からのお題が「只見線」これには相当悩んで白虎隊と電車を切っていた。奇術はダーク広和さん(誰かが言っていたが、目指せアサダ二世?)、漫才のロケット団(統一教会ネタで大いに盛り上げていた)。忘れてならないのが落語の柳家権太楼(う〜む、円熟味) 。

 

話は少しさかのぼり、落語の前にアメ横を散策した。ほんと久しぶり、摩利支天で猪に触ったりお上りさん状態。メイン通りは飲食店が増えて、なんだかアメ横感は少なく寂しい限りだ。上野駅前の岡埜栄泉も無くなっている。あの塩豆大福はもう食べられないのか。そこでガード下に突入、うう~んディープ。なんと、昆虫食の自動販売機に遭遇、アメ横捨てたもんじゃない。イナゴは食べたことはあるが、あえて昆虫食を買う人たちがいるのか不思議だ。来るべき食糧難に対応すべく先取りしているのか?でも埼玉のコオロギより広島の方が高かった、なぜ?ジッポのライター、万年筆などおじさん世代はどことなく懐かしい。栄枯盛衰は人の世の常だがアメ横のダイナミックさは消えていない、のかな。

 

さて肝心な夜の部、幹事殿についていくとこの日も赤羽で下車。と言っても南口、どちらかというと閑散としていて寂しい方。キャッチのお兄さんも私たちはお客ではないと一目で認定したようで全く声をかけてこない。そんななか古びたビルの2階にある中華居酒屋に入る。入り口は狭いが中は結構広い。ファミレス風のシートにおじいさんが一人、テーブルに生ジョッキを3つ並べて飲んでいた。私たちはその隣に案内され早速まずは同じく生で乾杯。と言ってもこのところ私は訳ありでノンアルコールビールなのだが。店員はアジア系のお姉さんで愛想はよくない。いつものことなのだが話はあちこちに飛ぶ。私は半分現役なのだが、お二人は役職を退任してから5、6年はたつ。現役時代の話も出てくるのだが、実はその前の仕事の話がみんな面白い。私を含め3人とも転職組なのだ。統一教会、趣味、家族、老化と体調、誰かの消息などなど、こんなものだ。2時間半ほどで店を出る。お店の客はこの間一組が入っただけ、採算合うのだろうかと心配になる。私の場合は、赤羽からこの日は宇都宮線に乗り大宮で新幹線に乗り換え家に着いたのが8時前。きわめて健全な飲み会だ。ところでいつものことなのだが、かかった費用はすべて幹事殿が立て替える。最後のテーブルで清算するのだが、酒量も一番多いのだがちゃんと割ってくれているか一瞬心配になる。多少多めでいいからと思うのだが、きちんと割る。そしてこれも恒例なのだがあと一人は、この時2千円札を中心に清算する。