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YOASOBIが変える光景(吉田庄一)

「YOASOBIって知ってる?」4年ぶりの新年会(中学、高校の友人4名)で訊ねてみたが、2名は全く知らなかった。そういう私も詳しいわけでなく、コロナ禍の在宅勤務でバックに音楽を流していて、なんとなく聴くようになったのだ。YOASOBIは、2019年に結成されたコンポーザーのAyaseとボーカルのikuraの音楽ユニットで、小説を楽曲にすることをコンセプトに、ヒット曲を連発している。デビュー曲の「夜に駆ける」が大ヒットしたので、曲を聴くと、聴いたことがあると思う方もいると思う。昨年は「アイドル」がビルボード世界ランキング1位になったり、2023年Google検索の世界トレンド“Songs”で「アイドル」が年間1位というように、世界中で大ヒットしている。なんとアメリカのテイラー・スウィフトなどのビッグネームを凌駕しているという。ボーカルのikuraは、中学3年の時、さいたまスーパーアリーナで開催されたテイラー・スウィフトのコンサートを3階席から見ていて、自分もあのステージに立つと思ったそうで、昨年6月に本当に実現している(すごいですね)。YOASOBIの魅力はAyaseの小説からインスピレーションされた曲作りの巧みさと、ikuraの曲にマッチした声質にあると思う。おじさん世代には早口でちょっとついていけないのだがikuraの歌声は心地よい。昔ユーミンに出会った感覚に近い。

 

そんな彼らが2023年から2024年にかけてアジアツアーを行っている。その様子がスマホなどで撮影されYouTubeにたくさんアップされている。たぶん違法なんだろうが、臨場感があり見ているとちょっと驚かされる。観客の多くが彼らの曲をほとんど知っていて、しかも日本語で歌えるようなのだ。香港、台北、ソウル、シンガポール、クアラルンプール、ジャカルタと観客は同じようなリアクションをしている。台北では募集人数の16倍の応募があったとか、ソウルのワンマンライブでは、チケットが1分で完売したとか、YOASOBI旋風を巻き起こしている。

 

ソウルのコンサートを見ると、やはり観客が日本語で歌い会場の一体感を醸し出している。YOASOBIも韓国語でメッセージを発し、温かく迎えられている。海外での初ワンマンライブをソウルでできたことがうれしいと素直に表現して、観客は「来てくれてありがとう」などの反応も聞こえてくる。そこには反日や嫌韓などはない。YOASOBIの音楽が日韓を覆っている暗雲を吹き飛ばしているのだ。良いものは良い、心に響くものは積極的に受け入れる、国境は関係ないのだ。YOASOBIも熱狂する観客を受け止めて、どこの国でも同じようにパフォーマンスしている(当たり前のことですね)。音楽は国境を越え、そして日本語の壁も越える現実を私たちは目の当たりにしている。現在の日本は海外競争力の低下があり、アニメやゲームがかろうじて元気な姿を見せているが、おそらく言語は英語かそれぞれの国の言葉に合わせていると思う。YOASOBIは英訳版もリリースしているが、コンサートはずっと日本語で通しているようだ。要するに英語の必要がないということ。

 

彼らに「群青」といヒット曲がある。合唱部分がありコンサートでは観客が歌うことを促される。ロサンゼルスのコンサートでも観客が歌っているようだったが、アジアではほかの部分も含めみんな日本語で自然に歌っているようだ。「たぶん」という曲では、観客のほとんど口ずさんでいて驚かされる。ジャカルタのコンサート映像を見ると、YouTubeに上げた人の周辺かもしれませんが、コンサートのセットリスト全曲歌っているようだ。観客が歌っているのでikuraが自分では歌わず、思わず観客にマイクを向けている(YOASOBIの曲ってみんな一緒に歌いたいんですね)。そういえば2023年Google検索の世界トレンド “鼻歌”で「アイドル」が年間3位だったそうだ。

 

YOASOBI現象の背景に、急速な情報環境の変化があり、それをうまく活用していることが窺える。観客がコンサートのセットリストの日本語歌詞をほとんど歌えるのもICT環境の充実と広がりだ。1曲ごとのストリーミング配信が受け入れられているのだ。ライブにはサポートメンバーがいるが、その一人一人も知れ渡っていて、あちこちで叫び声が聞こえている。ちなみにメンバーを紹介すると、ドラム(仄雲)、ベース・キーボード(やまもとひかる)、キーボード・歌(ミソハギザクロ)、ギター(Assh)の4名だ。私は、彼らのことは全く知らなかったが、ライブでは「Assh!」「ひかるちゃ〜ん」などのエールが飛び交っている。YOASOBIのコンサートの構成は男女3人ずつだ。この手のコンサートは、ボーカルが男か女かは別として、バンドメンバーの多くは男性で、女性はコーラス要員的な感じが多い。YOASOBIは男女同数、それぞれがしっかりとパフォーマンスを繰り広げているのも受け入れられる要因かもしれない。

 

YOASOBIは、今までの日本の常識から想像できないようなパフォーマンスを繰り広げている。欧米でも受けているONE OK ROCKがいるが、彼らはほとんど英語の曲と英語のMCでファンを掴んでいる。YOASOBIは、私たちにあまり知られていない楽曲も含め、なぜ日本語で歌われているのか、なぜ熱狂的に迎え入れられているのか。背景に楽曲の良さを世界中に浸透させる様々な仕掛けがあるようだ。Spotifyのストリーミングサービス、YouTube、TikTok、ツイッター(現X)などを積極的に活用している。そこにはYOASOBIチームの戦略があるのだろう。要は世界の情報環境の変化にしっかり対応しているということなのだ(現実の日本の音楽業界はガラパゴス化しています)。音楽を取り巻く環境変化にうまく対応しているというより、活用できるコンテンツやプラットホームなどを積極的に使っているのだ。結果が物語るように、こういった成功体験は、次に続くミュージシャンを生み出すと思う(期待を込めてですが)。最後に、ソウルコンサートのアンコールで登場したikuraは、「今日のことは絶対に忘れません!サラヘヨ コーリア!」と叫んでいた。嫌韓おじさん、おばさんには耐えられないだろう。「これでいいのだ」(バカボンパパ)

 

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コメント: 3
  • #1

    草子 (月曜日, 05 2月 2024 20:09)

    yoasobiなんて知らなかったよ〜私がズレているのか、それにしても凄いね

  • #2

    にじ (水曜日, 07 2月 2024 22:40)

    この間見せてもらってから、何回かパソコンで視聴。ハラミちゃんの時といい、はやりの音楽を教えてもらってありがとう。音楽は国境を越えていくんだね。文学でも若手の翻訳で気になる作品があります。韓国語勉強したいなあ

  • #3

    吉田庄一 (木曜日, 08 2月 2024 10:50)

    私はハラミちゃん→YOASOBIなんですよ。ハラミちゃんは何でも弾くので、特に今人気の曲は多くなります。そこで、Officisl髭男dismとかKing GnuとかAdoとか知りました。ストリートピアノでリクエストを募ると必然流行りの曲になる、が、おじさんは知らないしピンと来ないですね。でも何回か聞いているとなるほどねぇ〜と。